ネモフィラの丘と海上の鳥居が心を癒す、茨城1泊2日の静寂旅
【旅に出た理由|静かに自分を取り戻したかった】
日々の忙しさに追われていると、ふと「心がどこか置き去りになっている」と感じる瞬間があります。
SNS、メール、満員電車、締め切り・・・頭ではこなせても、心は少しずつ摩耗している。そんなとき、私は「誰も急かさない場所」に行きたくなりました。
東京からわずか1〜2時間でアクセスできる茨城県は、観光地としては目立たないかもしれませんが、そこには雄大な自然と、静かに包み込んでくれるような空気がありました。特に今回の旅では、「太古の自然」と「海辺の静寂」をテーマに、1泊2日で心と体をリセットするような時間を過ごしました。
初めて茨城を旅先に選んだと話すと、「なぜ?」と聞かれることもあります。でも、私は声を大にして言いたい。
「派手さがなくても、茨城には“深さ”がある」と。今回の旅は、そのことを証明する体験になりました。
観光スポット①|ひたち海浜公園で“青の世界”に溶ける
ひたち海浜公園は、茨城県ひたちなか市にある国営公園で、広さは東京ドーム約35個分。
季節によってさまざまな花が咲き誇ることで有名です。私が訪れたのは春のネモフィラシーズン。
まるで空が地面に降りてきたかのような、「ネモフィラブルー」の絶景が一面に広がっていました。
ネモフィラの丘を登っていくと、遠くに海が見え、足元には青い花々が揺れる。その一歩一歩に、心がふわっと軽くなる感覚がありました。
カメラのシャッターを切る手も、途中で止めてしまうほど、「今この瞬間をただ見ていたい」と思える景色でした。
【五感がほどけていく風景体験】
風が吹き抜け、空の青と花の青がつながる場所で、私はただ深呼吸をしました。
スマホの通知も気にならない。目の前の風景が、自分の中にあるざわつきを静かに沈めてくれる感覚。
ネモフィラは“ただの花”じゃなく、心のチューニングをしてくれる存在のように思えました。
周囲の観光客たちも、どこか表情が柔らかくて。
誰かが「こんなに静かな気持ちになるのは久しぶり」と話しているのが聞こえてきて、「あぁ、この場所は誰にとっても“癒しのフィールド”なんだな」と感じました。
【園内の魅力と過ごし方】
園内はとにかく広いため、徒歩だけでなくレンタサイクルの利用もおすすめです。
私も自転車で回りましたが、ネモフィラの丘を過ぎた先にあるチューリップ畑やスイセンの小道など、見どころが多くて飽きることがありません。
途中で立ち寄ったカフェでは、ネモフィラをモチーフにしたスイーツやドリンクが販売されており、私は「ネモフィラソフト」を注文。ミルキーな味に、ほんのりとした塩気が春風にぴったりで、旅の小さなハイライトとなりました。
隣にいたご夫婦も同じソフトを楽しんでいて、「この味、家でも食べたいね」と話していたのが印象に残っています。
こんな風に、偶然の出会いやちょっとした会話も、旅の醍醐味ですよね。
【訪れる季節ごとに違う“顔”を持つ公園】
ちなみに秋に来ると、同じ丘が真紅のコキアで染まる絶景に変わります。
私自身は過去に秋にも訪れたことがありますが、青から赤へと季節でまったく違う表情を見せるこの場所は、まさに“何度も来たくなる公園”でした。
春は希望を、秋は静けさをくれるひたち海浜公園。この場所はただの観光地ではなく、自分の心と向き合える“心の帰り道”のような場所として、私の中に深く刻まれました。
観光スポット②|神々しき朝を迎える「大洗磯前神社」
ひたち海浜公園の余韻を胸に、次に向かったのは太平洋に面した神社「大洗磯前神社(おおあらいいそさきじんじゃ)」。
この神社の最大の特徴は、何といっても**海の中に立つ鳥居「神磯の鳥居」**です。
波しぶきを受けながら海上に佇むその姿は、言葉では言い表せないほど神秘的で、「自然と信仰が交差する場所」と呼ぶにふさわしい場所でした。
私は早朝に訪れました。空が白んできた頃、水平線の先に太陽の光がゆっくりと広がり、鳥居を金色に染めていく——その光景をただ黙って見つめているだけで、胸の奥が熱くなり、自然と涙がこぼれそうになったのを覚えています。
波音以外は何も聞こえず、目の前にあるのは「祈りの形そのもの」とでも言うような空間でした。
本殿は高台にあり、階段を上ってたどり着く境内からは、太平洋を一望できます。
境内は凛とした空気に包まれ、地元の方が丁寧に手入れをされているのが伝わってきました。 御朱印をいただいた際、社務所の方が「朝は特に気が満ちているんですよ」と優しく声をかけてくださったのも印象に残っています。
地元グルメ|冬の味覚「あんこう鍋」に心まで温まる
宿に戻ってからの夕食は、茨城名物「あんこう鍋」。
冬の時期にぴったりの郷土料理として知られていますが、宿では一年を通じて提供しているところも多く、私が泊まった宿でもメイン料理として登場しました。
プリプリとしたあんこうの身は食べごたえがあり、味噌ベースのスープにはあん肝のコクが染み渡っていて、一口ごとに体の芯から温まる感覚。寒い夜、静かな部屋で食べるこの一杯が、旅の疲れをじんわりと溶かしてくれるようでした。
宿のスタッフの方が「今日は味が特によくしみてるんですよ」と笑顔で話してくれて、あたたかい料理に加えて、人の優しさも心に染みました。
那珂湊おさかな市場|地元の活気を五感で楽しむ
翌日は、車で「那珂湊おさかな市場」へ。朝から多くの人でにぎわい、新鮮な魚介類が所狭しと並ぶ市場の雰囲気は、地元の活気そのもの。
店先ではマグロやカニ、干物などが豪快に売られ、威勢のいい呼び声とともに、旅のテンションも一気に上がります。
私はここで握り寿司の朝食をいただきましたが、ネタの新鮮さに驚きました。とくにマグロの赤身は、口の中でとろけるような食感と旨みで、「これで1000円台?」と感動。
干物やしらすなどをお土産に購入し、自宅でも茨城の旅を味覚で再現できる楽しみも持ち帰れました。
持ち物アドバイス|旅を快適にする5つのアイテム
今回の旅を通して、「持ってきて本当に正解だった」と思えたものを紹介します:
• 歩きやすい靴:磯前神社の階段や海浜公園の散策に、クッション性あるスニーカーがベスト。
• ライトダウンなどの防寒着:海沿いの朝夕は冷え込むので、軽く羽織れるアウターは必須。
• モバイルバッテリー:写真を撮るシーンが多く、スマホの充電は旅の命綱。
•御朱印帳:神社巡りの記録として、後から見返して旅の記憶がよみがえる。
• エコバッグ:おさかな市場や道の駅での買い物に便利。折りたたみタイプがかさばらずおすすめ。
こうした準備があるだけで、旅の快適さはぐんと上がります。特に自然が多く歩く場面が多い茨城では、足元と体温調整の装備がとても大事だと実感しました。
まとめ|自然と信仰が心を整えてくれる旅
今回の茨城の旅は、派手なエンタメや華やかな観光スポットとは違い、心の奥に静かに染み入るような体験の連続でした。
ひたち海浜公園で体験した「青の世界」、大洗磯前神社で感じた「祈りの場の空気」、市場で味わった新鮮な海の幸——
どれもが騒がしい日常とは対極にある、“本当の豊かさ”を教えてくれた気がします。
普段、私たちは忙しさの中で立ち止まることを忘れがちです。
常に画面や情報に囲まれて、心が落ち着く間もなく流れていく日々。
でも、自然や歴史の中に身を置くと、時間の流れが変わり、自分の呼吸や感情に気づくようになります。
特に印象的だったのは、大洗磯前神社で朝陽を眺めながら立ち尽くした時間。
あの鳥居の前では、言葉にしようとしてもできないような“心の奥底のざわめき”が、不思議と静かにほどけていきました。
自然と信仰が共存する場所には、人を変える力があるのだと、あらためて実感しました。
旅を終えて|自分を取り戻すための「余白」を持つ
この旅を通じて気づいたのは、旅というのは「刺激」を求めるだけでなく、「余白」を作る時間でもあるということ。
ネモフィラの丘でぼんやりと景色を見つめていた時間、温泉宿で何もせず過ごした夕暮れ、
朝の市場でただ地元の人の会話を聞いていた瞬間——どれも「何もしない贅沢」だったのだと思います。
忙しい日常の中では、何かを“していない”自分に不安を感じることもあるけれど、
今回の旅では逆に「何もしないことで、自分に戻れる」感覚がありました。
茨城という場所の持つ“静かな力”が、それを後押ししてくれたのかもしれません。
私にとって、この旅は「情報から距離を置くこと」の大切さも教えてくれました。
スマホを手放し、スケジュールを詰め込まず、ただ風の音に耳を澄ませる。
そうした時間こそが、自分を回復させる栄養だったのです。
さらにもうひとつ思ったのは、「整う旅」って、意外と近くにあるということ。
飛行機に乗らなくても、海外に行かなくても、心が癒される場所はすぐそばにある。
それに気づけたのも、今回の旅の大きな収穫でした。
旅が終わって数日経った今でも、不思議と心に静けさが残っています。
「またどこかに行きたい」ではなく、「また自分と向き合いたい」と思える旅でした。
しめくくり|次の休日は「心の旅」に出かけよう
もし今、少しでも「疲れてるな」「最近、自分を見失ってる気がする」と思っているなら——
次の休日は、ぜひ茨城へ出かけてみてください。
観光地としては控えめかもしれないけれど、ここには騒がない分だけ、深く響く体験があります。
自然と静けさに包まれる場所で、自分のペースを取り戻す時間を持つこと。
それは、これからを生きるための“土台”になるはずです。
日光のような派手さも、温泉地のようなにぎわいもないかもしれない。
でも、風の音や波の音に耳を傾け、湯に浸かりながら空を見上げるだけで、日常のざわつきがすっと遠のいていく。
茨城には、そうした“静かな力”があると、私は心から思います。
この旅で得た“静けさの記憶”を、私はこれからもふと思い出すでしょう。
日常に戻ってからも、心がざわついたときには、ネモフィラの風景や海に浮かぶ鳥居の姿を思い浮かべる。
それだけで、また少し自分に戻れる気がするのです。